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絵馬とは

●絵馬の歴史

 絵馬はその時の如く、板などに馬の絵を描いて神社仏閣に奉納したのが始まりであったといわれる。天災や疫病が起こった際にこれを鎮めるため、神社に神の乗り物である生きた馬を奉納していたが、経済的な理由により生きた馬を奉納できないときに生馬の代わりに土製、木製の馬形や板に馬を描いた絵馬を奉納したのである。この生馬から絵馬への転換は、近年の発掘調査から発見される古代の絵馬には馬の絵柄しか描かれていないことや、平安時代に成立した 『今昔物語集』 のなかに、道祖神の乗り物として絵馬が記されていること、古代、中世に成立した絵巻物の中に見られる絵馬にも馬の絵しか描かれていないこと、絵馬を立体的に見せるように工夫された板立馬(いたたてうま)と呼ばれる絵馬が残されていることなどから、確かなものとされている。

 ところで、現在絵馬には馬だけでなく、さまざまな絵が描かれている。このような傾向は、残された絵馬資料により室町時代頃からのものであるとされる。この時代には奉納する社寺に合わせてそこの神仏を絵馬に描いたり、馬以外の絵も描かれるようになる。それと同時に絵馬に芸術的価値を認め、有名な絵師に依頼して優れた絵を描いた大型の絵馬を社寺に奉納し、多くの参詣客にアピールするといった動きもみられるようになる。このような絵馬はその大きさから、大絵馬と呼ばれ、これとは別に祈願のために奉納する昔からの絵馬は大絵馬に比べ形が小さいことから小絵馬と呼ばれる。

 江戸時代になり、町人文化の爛熟とともに、絵馬に描かれる絵も多様化し、また一方で願いごとに応じた絵も考案され、江戸や京大坂では絵馬を専門に描く絵馬屋が現れるなど絵馬奉納の習俗は最盛期を迎える。また、絵馬に馬ではなく願い事を絵にして描くようになったことで、絵馬は単純に神様にお願い事を聞いてもらうための手紙のような意味合いに変化していったとみることができるだろう。

 この頃までの絵馬奉納スタイルは、奉納者が自分で絵を描くか、絵馬屋で売っている絵馬を購入するか、あるいは絵師に絵を描いてもらい神社や寺院に奉納するもので、願い事はもっぱら絵で表し、奉納者の名前を伏せ、ほとんど文字が記されていないのが特徴である。

 絵馬奉納の習俗は、近代に入っても継続されるが、一方でそれまでの絵馬、特に子絵馬に描かれた稚拙だがユーモラスな絵が郷土趣味の愛好家の間でもてはやされるようになったり、昭和に入ると絵馬に切手を貼ってハガキとして送る郵便絵馬の出現や、観光土産として絵馬が売られるなど、神仏に奉納するという絵馬本来の意味から離れたものが登場してくる。

 昔からの絵馬奉納習俗は戦時中の混乱の中でほとんど廃れてしまう。その後絵馬奉納の習俗が復活するのは戦後高度経済成長を迎える頃であるが、復活した絵馬奉納はそれまでとは異なり、神社や寺院が主体的にかかわる新しいスタイルとなり、現在に至るのである。

●参考文献
 長野市立博物館 『お願い!神さま仏さま ―絵馬にみる人々の願いと暮らし―』 2009年